
2025年の金相場の今後の予測とは?アメリカのトランプ関税の影響はある?
金は長年にわたり、「安全資産」の代表格として世界中の投資家から注目されてきました。ところが、2025年に入ってからはアメリカのトランプ政権による大規模な関税政策や世界的な金融市場の混乱が重なり、金価格が大きく上下する局面が相次いでいます。1グラムあたりの店頭小売価格が史上最高値を更新した直後に、急落してしまうなど、激しい乱高下が目立つようになりました。一体なぜこんな事態に陥っているのでしょうか。そして、今後の金相場にはどのようなシナリオが考えられるのか、最新の動きをもとに考察していきます。
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金は本当に「安全資産」なのか?長期的な値上がり傾向と急落の理由

まず、金は長期的に見ると値上がり傾向が続いていることに変わりはありません。大手貴金属会社が公表している国内の金店頭小売価格は、5年前に比べても上昇しており、2025年3月には1グラムあたり1万6398円と過去最高値を記録しました。翌月の4月1日には1万6605円にまで到達し、さらに最高値を塗り替えたのです。
しかし、その後の4月7日に1000円以上も下落するという大きな値動きが見られました。主な背景としては、トランプ大統領の関税政策への懸念から株式市場が急落し、大きな損失を出した投資家が金を売却して資金を補填しようと動いたことが原因だと考えられています。安全資産であるはずの金が売られるのは一見矛盾しているようですが、パニック相場では損失を穴埋めするために比較的流動性の高い金から資金を回収しようとする現象が起きやすいのです。
トランプ関税の衝撃:アメリカの「解放の日」がもたらした金融市場の混乱
2025年4月3日、トランプ大統領は「解放の日(Liberation Day)」と名付けた大規模な関税措置を発表しました。具体的には、すべての輸入品に対して基本関税10%、EUからの輸入品に対して20%、韓国からの輸入品には25%、さらに日本からの輸入品には24%という高率の関税を課すという内容です。世界の貿易を主導してきたアメリカがこのような保護主義的な方策を打ち出したことで、市場は大きく動揺し、金相場を含むあらゆる金融商品の価格に影響が出ました。
金相場の変動要因は「需要と供給のバランス」「世界経済・金融のリスク」「米ドルに対する為替変動」「金利政策」「地政学的リスク」などが代表的ですが、今回の関税政策はとりわけ「世界経済・金融のリスク」と「米ドルの行方」を顕著に揺さぶっています。トランプ政権が大きな政治決定を行うたびに、投資家が金を買ったり売ったりする動きが活発化し、値動きが通常よりも大きくなるのです。
米国金相場と国内金相場の連動:急落とその後の回復
アメリカの金先物市場では、関税発表当日に一時的なパニック売りが発生し、1オンスあたり3,166.20ドルから3,073.50ドルまで下落しました。しかし、その後は安全資産としての価値が再認識され、3,121.70ドルまで回復して取引を終えています。世界的な株安の中で、金が再び買われる動きが出たというわけです。
一方、日本国内の金相場も連動して大きく変動しました。4月1日に1万6605円という史上最高値を更新したあと、わずか数日で700円以上も下落する場面が訪れています。背景には円高ドル安の加速と、NY金相場の下落が同時に起きたことがあり、為替と連動した形で国内の店頭価格も乱高下を繰り返したのです。
今後の金相場を左右するポイント:トランプ関税の成否と世界経済の行方
今回の値動きは、関税措置によるインフレ懸念や世界経済の減速リスクが反映されていると考えられます。投資家としては、引き続きトランプ政権の関税政策の行方を注視しなければならないでしょう。もしアメリカがこの大規模な関税によって巨額の税収を得ることに成功し、国内経済が好転すれば、基軸通貨であるドルの価値が上昇する可能性があります。その結果、金は「ドルの代替資産」としての魅力が薄れ、売り圧力にさらされるシナリオも想定されるでしょう。
逆に、各国が報復措置を取ることで世界貿易が停滞し、米国経済の先行きにも不透明感が広がれば、リスク回避のため金が改めて買われ、さらなる高値を目指す展開も考えられます。すでに中国をはじめとする主要国が米国債ではなく金を積極的に購入しているという見方もあり、世界のマネーが「信用リスクの低い」金へと向かう可能性は十分にあるのです。
中国の金購入と米国債の動向:さらなる相場乱高下の火種に
近年、中国政府が大量の金を買い増しているという噂は、金相場を強気にしている大きな要因とされています。中国は米国債への依存リスクを低減すべく、毎年価格が上昇しやすい金に資産をシフトしているのではないかとも言われています。もしアメリカが関税政策によって税収を増やし、巨額債務問題を解消できるとすれば、ドルの信認が高まる一方、中国の動き次第では金の需給がさらにタイトになり、価格を押し上げる要因となり得るのです。
一方で、金の高騰はドルの価値低下を示唆するケースが多いため、トランプ関税が成功するか否かは金相場にとって分岐点となるでしょう。中国だけでなく他の国々も含め、国際社会がどの程度ドルを保持し続けるのか、金をどこまで安全な投資先とみなすのかによって、今後の相場は左右される可能性があります。
まとめ:2025年の金相場は乱高下に備えつつ、トランプ政権の動向を見極める
これまでの経緯を振り返ると、金は確かに長期的な値上がり傾向にある一方、短期的には株安に伴う投資家の損失補填や、トランプ政権の政策発表によるパニック売りなどによって、大きく急落するリスクを常に抱えています。2025年4月における史上最高値更新と1000円以上の急落は、その典型例といえるでしょう。
特に今年は、関税政策の影響が世界貿易や為替、債券市場にも波及しやすくなっているため、金相場が一方的に上昇するというよりも、乱高下を繰り返す可能性が高いと考えられます。投資家はリスクを十分に認識したうえで、トランプ関税の成否や各国の対応、ドルの動向、さらには中国など新興国の金購入の動きに注目しながら柔軟に対応することが求められるでしょう。
「安全資産」と呼ばれる金も、絶対的に値上がりを保証してくれるわけではありません。世界経済の見通しや政治情勢が不透明な中、金は引き続き魅力的な選択肢でありつつも、大きな変動リスクを内包していることを忘れてはならないのです。トランプ政権の政策が本当の意味で「成功」し、ドルが再び強さを取り戻すのか、それとも関税が世界的な貿易摩擦を引き起こし、安全資産としての金がさらに評価される展開になるのか――2025年の金相場は、まさにその岐路に立っているといえるでしょう。